社会保険(厚生年金・健康保険)に関するQ&A

Q1 社会保険には、必ず加入しなければならないのでしょうか?

A2 必ず加入しなければならない事業所とそうでない事業所があります。

必ず加入が必要な事業所を「強制適用事業所」、そうでない事業所を「任意適用事業所」といいます。

加入が必須の事業所

以下に該当する事業所で従業員を雇ったら、必ず社会保険へ加入させなければなりません。

  • 法人
  • 個人事業で常時5名以上の従業員がいる事業所

加入が不要な事業所>

以下の個人事業主の事業所であれば、社会保険に加入する必要はありません。ただし任意加入は可能です。

  • 個人事業で常時5人未満(4名以下)の事業所
    個人事業で以下の業種に該当する場合には、5名以上の従業員がいても社会保険へ加入する必要がありません。
  • 農林、水産、畜産業
  • 旅館、飲食料理店、理容業などのサービス業
  • 弁護士や税理士、社労士等事務所など
  • 神社、寺、教会などの宗教業務

Q2 経営者の1人会社や役員しかいない会社でも加入しなければならないのでしょうか?

A2 法人の場合、経営者の1人会社でも社会保険への加入が必須です。役員にも報酬を払っている以上、加入させなければなりません。

ただし常時5人以上の従業員を抱える個人事業所の場合、強制適用なので従業員についての加入は義務ですが事業主については加入義務がありません。

Q3 ただでさえ経営が厳しいのに保険料の負担が増えると破綻するので、社会保険に入りたくありません。どうすれば良いでしょうか?

A3 社会保険の強制適用事業所では、経営状況にかかわらず必ず加入させなければなりません。無視するのは違法行為ですし、保険料を追徴されるなどのペナルティが及びます。そもそも社会保険料の事業主負担分は給料などと同様に「人件費」の一種として企業がどうしても負担しなければならない経費です。強制適用事業所が人を雇うときには社会保険料の事業主負担分が発生することも見越して、計画的に雇用しましょう。

Q4 社会保険料はどのくらいの金額になりますか?

A4 社会保険料の金額は「標準報酬月額」によって決定されます。

具体的な金額は都道府県ごとの「保険料額表」にあてはめて計算します。
都道府県によって保険料額表が異なるので、茨城県内の企業であれば茨城県の保険料率表を適用しなければなりません。
また社会保険料には事業者負担があり、2分の1は事業主が支払う必要があります。

ざっくりした金額をいうと、「給与額の30%弱」程度を会社と労働者が2分の1ずつ負担するものと考えましょう。

Q5 標準報酬月額とはなんですか?

A5 標準報酬月額は、毎月の社会保険料を計算するための基準となる額です。

基本的に被保険者の4月から6月までの3ヶ月間における総支給給与額の平均値をもとに決定されます。適用期間は同じ年の9月から翌年の8月までです。これを「定時決定」といいます。

標準報酬月額は、給与の総支給額に応じて段階的に設定されていて、厚生年金であれば31段階、健康保険であれば50段階の等級があります。

標準報酬月額が決まるタイミングを、定時決定を含めてご紹介します。

  • 定時決定
    毎年1回、7月1日に在籍している被保険者の報酬をもとに決定されます。
  • 随時決定
    昇給や給与カットなどによって報酬額が大きく変動したときに行われる決定です。
  • 資格取得時決定
    社会保険に加入するときに決定されます。
  • 産前産後・育児休業終了時改定
    産前産後休業や育児休業期間が終了して標準報酬月額に1等級以上の差が発生したときに行われる改定です。

Q6 社会保険に加入しなかった場合のペナルティはどのようなものとなっていますか?

A6 強制適用事業所では必ず従業員や法人の役員、代表者が社会保険に入らなければなりません。

過去の社会保険料を徴収される

加入を怠っていると、過去にさかのぼって社会保険料を徴収されます。遡及する期間は2年なので、2年分を全額払わねばなりません。従業員が半額を負担するとはいえ、従業員に過去の保険料のまとめ払いを要求しても、支払いに応じるケースは少数でしょう。過去の未納分を今後の給与から天引きすることもできません。結果的に事業主が全額負担しなければならないリスクも発生します。

受け取れなかった年金などの補償を請求される
強制適用事業所が従業員を社会保険に加入させなかったために定年退職した元従業員が老齢厚生年金を受け取れなかった場合、年金額を会社が負担しなければならないと判断した裁判例があります(平成18年9月5日 奈良地裁判決 豊國工業事件)。

同様に従業員が障害者となったり死亡したりしたときに、本人や遺族から本来なら支給されたはずの年金額を請求されると、負担しなければならないリスクも発生します。

Q7 育児休業中も社会保険料がかかるのでしょうか?

A7 育児休業中は、社会保険料がかかりません。

被保険者が1歳未満の子どもを養育する目的で育児休業を取る場合、事業主が申し出れば会社負担分、本人負担分ともに社会保険料の納付が免除されます。

ただし免除を受けるには事業主が年金事務所へ「育児休業取得者申出書」を提出しなければなりません。免除が開始するのは「育児休業取得者申出書」を提出した月からです。
従業員が育児休業を取得しても申出書を提出しなければ、従来と同様に保険料を払わねばならないので注意しましょう。

Q8 内縁の配偶者を社会保険の扶養に入れられるのでしょうか?

A8 事実婚の配偶者であっても「被保険者との生計維持関係」が認められれば社会保険の扶養に入れられます。社会保険の扶養関係は「実態」を重視しますので、必ずしも法律婚が成立している必要はありません。

具体的には内縁の配偶者本人の年収が130万円未満であり、被保険者の年収の2分の1以下であれば扶養に入れることができます。

内縁の配偶者を扶養に入れたいと希望する従業員がいたら、以下のような書類を用意させましょう。

  • 被扶養者(配偶者)の収入証明書
  • 被保険者と被扶養者の続柄がわかる住民票
  • 被保険者と被扶養者それぞれの戸籍謄本(被扶養者が別の人と婚姻していないことを確かめるために必要です)

Q9 従業員が退職したら、社会保険はどうなるのでしょうか?

A9 健康保険と厚生年金で取り扱いが異なります。

健康保険については「任意継続制度」があり、元従業員が希望すれば2年間社会保険の利用を継続できるケースがあります。

退職後の健康保険の取り扱いのパターンは以下の4種類です。

任意継続する
継続して2ヶ月以上、社会保険に加入していた元従業員の場合、退職後も引き続いて2年まで、社会保険の健康保険を任意継続できます。
ただし任意継続するには、退職後20日以内に健康保険組合で所定の手続きをとらねばなりません。

転職先の社会保険に加入する

従業員が退職後すぐに別の会社に就職する場合、転職先の社会保険に入れる可能性があります。

国民健康保険に加入する

任意継続を希望しない場合や任意継続する資格が認められない場合で再就職もしない場合には、元従業員は自治体の国民健康保険へ加入しなければなりません。

親族の被扶養者になる

退職後仕事をしない、またはパートなどで収入が低い場合には、配偶者などの親族の社会保険に入れてもらえるでしょう。

厚生年金には任意継続制度がないので、国民年金に加入する必要があります。ただし親族の被扶養者になれば自分で年金保険料を払う必要はありません。転職先の社会保険にも入れます。

Q10 保険外交員にも社会保険が適用される?

A10 保険外交員を使って営業している場合、社会保険が適用される場合とされない場合があります。

社会保険が適用されるのは、保険外交員を「雇用」しているケースです。会社が稼働時間を管理し、本人に対する具体的な指揮命令を行っていて交通費やパソコン、消耗品代等を負担しているなら「雇用関係」といいやすいでしょう。
一方、出勤時間や営業日、営業方法を保険外交員本人の裁量にまかせており、交通費や使用するパソコン代なども本人負担であれば、「個人事業主」への業務委託と考えられます。この場合、社会保険は適用されません。

ただし社会保険料の納付を逃れるために、実質は「雇用」であるにもかかわらず契約書の名称を「業務委託」などとして届出や支払いを怠るのは違法行為です。後で発覚したときにトラブルになるので、そういった対応をしてはなりません。

なお労働時間が週20時間以下など短い場合には、雇用関係であっても社会保険への加入が義務付けられない可能性があります。

Q11 社会保険に加入するとどんなメリットがあるのですか?

A11 社会保険に加入すると、国民健康保険や国民年金よりも手厚い補償を受けられます。

たとえば厚生年金に加入していると、国民年金にしか入っていない場合と比べて将来受け取れる老齢年金が高額になります。国民年金にしか加入していない場合には一般的に月額6万円程度の老齢基礎年金しか支給されず、それだけで生活を維持するのは厳しいでしょう。厚生年金に入っていれば10万円以上の給付を受けられるケースが多数です。
障害年金や遺族年金が支給される要件、支給額なども、国民年金と厚生年金では大きく異なり厚生年金が有利です。

また国民健康保険では親族を扶養に入れることができませんが、社会保険なら扶養に入れられるなどのメリットもあります。